2次元彼女

著作者:風海南都   著作者の作品一覧へ   ホームへ


[あらすじ]
綾》と別れてから三週間・・・なんにもやる気がおきない毎日。18禁のチャットサイトにいってみたら偶然「綾」というハンネの女の子が現われた…!
2次元彼女
だるいなあ…


日曜の午後 ゆるい雨
綾と別れてから3週間…


ふぅ…
ベッドに横たわりながら携帯のWebを…


テレビからつまらない釣りの番組が流れてるがついてるほうがマシ



「ピィチLove」―

何?
チャットか…
18禁 (笑) したことねーな… 入場をクリック
黒をバックに妖しいピンクの文字表示…ストリップ小屋みてぇ〜行ったことねぇケド(笑)


えーと そか ハンネ入れんのか…
何にしよ…

白い四角の箱の中に文字を入れた

今から俺は
「優」だ

空き部屋へ 入室―

ROOM018へようこそ 優さん

ピンク色の文字が少し毒々しく俺を迎えた

うわ…なんだか あやしいなあ…

説明を読む
なるほど この数字はIDね…

@つけるとROMできないのか…ふんふん

誰かきたら挨拶…なるほど
で… これは どうすればいいわけ?



テレビでは鼻の頭を赤くしたおじさんが釣り竿の説明をしてた




女の子が待機の部屋にはひっきりなしに野郎が入室してるなあ (笑)


ちょっとROMってみようかな


俺は他の部屋を覗いてみた

―6号室

ちか》だかやあ〜 ちかの彼氏わあ〜 毎日エッチしゅるっていうんだよぉ〜♪

カズ》それは ちかが魅力的だからだねっ(#^O^#)



……赤ちゃん語?勘弁してよ 野郎も(#^O^#)はヤメレ!でもあんなんが好きなやつもいるからなあ(笑)


―28号室

洋介》ねぇ 胸 何カップ?俺とチャエッチしよう(*^_^*)

くみ》やだ スケベ!教えないっ この部屋はエロ禁止

洋介》エロ禁止って…ここは エロチャだろぉ?



…確かに…18禁だ…
エロ話が嫌ならこなきゃいーじゃん
つか…チャエッチって何?
チャットでエッチってことか…チャでどうやんの?



―38号室
あゆ》待ってたあ ダーリン

真》遅くなってごめんね…チュッ!

あゆ》あゆも…チュッ!

―鍵中です 閲覧できません


…鍵かけた(笑)何やってんだろ どんな会話してんだ…
誰か来てるかもな 戻ってみるか


部屋にもどり 更新してみた

―綾さんが入室しました

テレビでは網に入った魚が跳ねていた



…綾?まさかね…ああ いなくなっちゃうかも
俺は慌てて文字を打った



優》こんにちわ


「更新」

綾》こんにちわあ はじめまして!


…あっ いたいた よかった

優》はじめまして 綾はいくつ?

綾》19です。優はいくつ?

優》俺は22才。よろしくね


…思わず4つもサバを読んだ
実は別れた彼女にできたという新しい彼氏は22才だと聞いていた
まったく俺って奴は…



綾》わあ 年上好きだから嬉しい


…ホントは貴女が年上です ゴメンナサイ…




その日はお互いの事をいろいろ話した


あっというまに時間が経ち、携帯を閉じる頃 テレビはおかっぱの女の子が主人公のアニメが賑やかに鳴っていた

綾は19才 九州に住んでいるらしい ファミレスに勤務していて 彼氏は募集中…
好きなアーティストはブリトニーとアヴリル


あの日から時々話すようになった

他愛もない話しばかりだが、チャットビギナーの俺にとっては新鮮でいい気分転換になった

綾は明るくて楽しい子だった


俺は車の部品を製造する会社に勤めていることにしておいた

その日はチャットに綾はいなかった

たまに綾がいなくても 俺は他の人と絡んだりしていた

なんとなく部屋に待機してみた


―美月さんが入室しました

…誰か来たなあ

優》こんばんわ

美月》こんばんわ 何歳?

優》僕は22。美月さんは?

美月》美月でいいよ。26で年上だけどいいかな?

優》全然かまわないよ。よろしく御姉様(笑)


だいぶ年上だ

話してみると姉御肌なとこもあり奔放な感じの姉さんだ(笑)


美月》ね ね 優はどんなタイプ?身長と体重聞いていい?

…そんなん聞いてどうすんの?と思ったけど合わせる事にした

優》身長170 体重55かな

美月》あ 細身じゃん!タイプかも〜ワラ


美月》鍵


―鍵中です 閲覧はできません


…ひょ 鍵なんてはじめてかけられた… なんか チャットなのに 二人きり感があるなあ〜
なんてちょっとドキドキした

美月》ね ね 美月 Eカップなんだけど 好き?

…好きって…まあ 嫌いじゃないけど…


優》おっきいね。なんかドキドキしちゃうな

…とりあえずテキトーに答る


美月》ウフ♪ 美月ちょっとムラムラしてるんだよね。チャエチかテレセしない?

…はあぁ?ど どうやってやるのでしょうか?
テレセって…はあぁ?
無理だ…俺には


優》すっごく残念なんだけど出かけるんだ


俺はテキトーな言い訳をして落ちた

たとえヘタレと言われてもいい…無―理ー



テレビはつきっぱなしだ
アイドル歌手がヒラヒラと歌っている


携帯を閉じてベッドに寝転び天井を見つめた

…なに やってんだ 俺…



一応は受験生…
《綾》と別れてからはやる気が起きず サボり気味だ

勉強以外も何もかもやる気がおきない…

チャットなんかしてる場合じゃないけど
綾のおかげでかなり気が紛れているのは確かだ


それにいろんな人がいて2次元の住人はなかなか興味深い

半分以上は嘘だと思うが 様々な部屋をROMってると団地の管理人の気がしてくる

いつ覗いてもいる人…いわゆる常連さんはある意味ジャンキーだろう

綾も比較的よくいるほうだ

俺も最近はハマってきて 昼休みとか 少しでも空き時間があると 携帯を開きサイトを呼び出した

本来なら参考書を読むべき時間である

寝る前にもう一度携帯を開いた

綾がいた

入室しようとしたら鍵がかかっていた

―鍵中です 閲覧はできません


相手のハンネは潤也
まちがいなく男だ

…何 話してんだよ…少々面白くない

とりあえず眠ったが夜中に少し暑くて目がさめたトイレに行き 寝ようとして携帯を開いた

なんの気なしにサイトを呼び出した

綾がまだ潤也と2ショットで鍵をかけていた

あれから2時間以上たっている

…なんだよ マッタク

俺はムカついていた
軽い嫉妬さえ覚える
たかがチャットに 何ムカついてんだ 俺は

自分に呆れながら寝てしまった



翌日の昼休み
サイトを呼び出すとまた綾がいた

またもや 鍵中

今度は智史 男だよね


何してんだ わざわざ鍵かけて…
またもや イラっとした
俺は自分に苦笑い

毎日サイトを覗いていた

時間がない時はROMだけ
綾を見つけるだけで楽しかったからだ

綾が待機していると男女関係なく出入りがありにぎやかだ

綾がなかなかの人気者なのがわかる

話題が明るくエッチな話も楽しく切り返す

機転が聞く返事をするし あんまりにもスケベな輩すら上手くかわしている


そんな綾はなぜか俺を気にいったらしく 綾の部屋に入室すると熱烈歓迎してくれるし
「優を待ってたの♪」なんて 男心をくすぐることを言う


全く男ってバカだな


なもんだから他の男と2ショットなんて面白くないのだ

その夜俺が待機していると綾が入室してきた

優》こんばんわ

綾》優〜っ 会いたかったあ

綾はその日は職場のグチを話始めた

俺はふんふんと半分だけ聞くふりをしてぼんやりとある事を思い出していた


《綾》と付き合うきっかけは俺が高一の冬休みに短期間のファミレスのバイトをした時だ

一つ年上の《綾》が一緒のシフトだった

あいつも同じようなグチ言ってたな…

バイトがきっかけで付き合うようになった

《綾》は自分の目標をしっかり持っていて 俺はそこに一番惹かれたんだと思う

大人しい印象だが明るくて頭がよく 話題が豊富だった
本が好きで俺も無理矢理読まされたが どれも面白かった

《綾》は俺より偏差値の高い高校でもちろん進学希望だった

俺も進学希望だったが比較的のんびりしていた
でも《綾》に影響されて ワンランク上の大学を目指すようになった

面倒くさがりの俺を変えるような人間的な魅力のある人だった

そもそもそんな進学組の《綾》が2年の冬休みにバイトをするなんてことが有り得ない訳で… 俺達はよく偶然は必然なんて言っていた


綾》優?いるの?

優》あ ごめん いるよ

綾》レスがないから落ちたのかと思ったあ(泣)

優》電波の悪いとこにいたからごめんね


…俺は思い切って聞いてみた

優》こないだみかけたら鍵かかってて入れなくて。潤也とか 智史とか
綾》ああ…あれぇ?


綾》鍵


…綾は鍵をかけた 人に覗かれたくない話なのかな

優》うん 何話してたの?


綾》あれねぇ チャエッチしてたの


…はあぁ?お前 何言ってんの?


綾の話をまとめるとこうなる…

潤也は綾に最初にチャエッチを教えてくれた人で(綾がそう言った)
いろいろと仕込まれ(綾がそう言った)
最近じゃチャエッチが上手くなるようにいろんな男として、上手くなって俺を楽しませてくれと潤也が言うから 誘われたらOKしている…だそうだ…

だって潤也が一番好きだから潤也の為に上手くなりたいの!(しつこいようだが綾がそう言った)


…何ソレ…バカじゃないの?
わけわかんねーなーとポカンとしてしまった

とりあえずテキトーに受け答えしていたが 呆れてしまった


じゃ 寝るわといって落ちたが 頭の中は少し混乱していた

なんだあ ソレ?いくらチャットといえども 乱れてない?(苦笑)

少なからず綾が いろんな男に言葉で犯されているかと思うとイラついたし 文字でどうやって興奮すんの?とアホな考えが交錯した

そして更にアホなことに闘争心が沸いた

本当に男はバカだ




誤解のないように言っておくが 俺は決してモテない訳ではない


地元のラジオ番組で気になる人を投稿する人気番組があるのだが いきなりラジオから

『西南高校 一年D組の岡田愁平君!』

と自分の名前が呼ばれた時は驚いた

なんとかっていうアイドルに少し似ていて繊細な横顔がいいとかなんとか 顔から火が出るような内容だった
投稿するほうは匿名だが呼ばれたほうは実名だからたまったもんじゃない

俺は同じ目にあった何人かと同様 しばらくの間さらし者だった

教室に見に来るのである…
おかげでその年のバレンタインのチョコは過去最高記録だった
俺はいつも冷静な《綾》がヤキモチを焼いてくれるかと期待したのに俺よりもその状況を楽しんでいた…



ある日の夜

サイトを呼び出した

綾がいた

俺は迷わず入室した

―優さんが入室しました

綾》優〜 こんばんわあ〜

優》こんばんわ 綾
潤也とは会えたの?
綾》うん 夕べね〜(笑)


…知ってる 見たもん また長々と籠ってた(苦笑)


優》鍵

―鍵中です 閲覧はできません


綾》優が鍵かけるなんて珍しい〜  どしたのぉ?


優》今日は僕と試してみない?

…誘ってみた

「更新」

あれ?レスがないな 引かれた?


「更新」


綾》ん…いいよぉ(照)



俺は初めて文字でセックスした

セックスって言っていいのかな…いいんじゃないか

とりあえず俺は《綾》と初めてした時の行為を文字に表してみた


思いがけず興奮した

《綾》を最初に抱いた時は 彼女のほうが初めてで俺は戸惑ったけど嬉しかった

愛しくて いつまでも抱きしめていたかった


《綾》を思い出して俺の心も体もせつなくなった



綾は果てたようだった


俺はそこまでは無理だったけどそれなりに興奮した

綾の反応がかわいくもあり、充分に心をくすぐられた

終わったあと綾はしきりに照れていた


綾》優のエッチって優しいんだね〜興奮しちゃったあ


…へぇ〜 よくわからんがそうなのか…



俺はしばらくこの遊びに夢中になった



潤也に勝ってやろうなんて気もあったから尚更だ

ほぼ毎日綾とチャットしていた エッチもした


俺は相変わらず果てることはなかったけど文字で相手を興奮させることが面白くなっていた

まるでゲーム感覚だ


テスト期間に入りしばらくチャットにいかなかった

テストが終わりひさしぶりにサイトを覗いた


綾を見つけたから入室した

―優さんが入室しました

綾》ひさしぶり〜!会いたかったあ〜(泣)

優》俺も。ちょっと仕事が忙しくて

綾》鍵

―鍵中です 閲覧はできません


…ひさしぶりの2ショットだ

以前 綾が写メを誰にも(潤也にも)見せた事がないと言ったのを思い出した


優》ねえ 綾の写メが見たい…ダメかなあ

綾》ええー!


「更新」


「更新」


…しばらくレスがない
とりあえず待ってみた


「更新」


URLが貼られていた

クリックしてみる



………
「!」………


年よりも幼い感じの顔写真が出て来た

ちょっと意外だった

丸顔の素朴な感じで美人じゃないけどかわいかった


こんな子があんな事をするなんて…って感じ

潤也に勝った気がする

写メを見せられた事で俺は満足した

綾はメルアドなんかも交換したことがないと言っていた

ほかの部屋をROMると やれ写メだ アドレスだ 電話番号だと 男共が騒いでいる
俺は面倒臭いし あくまでもバーチャルはバーチャルなので そういう事には興味がなかった




綾》優が一番好き♪


…ふいに綾が言った
更に俺は満足したが 目的を達成したせいか スッと熱が引いていく感じもした


俺は風呂からあがり 部屋の窓を開けた

風は初夏の匂いがした


相変わらずテレビはつけっぱなしだ

お笑い番組で芸人が熱湯に入るとかで騒いでいる


今更 熱湯かよ つまんねーな…
それでも テレビがついているほうがマシだ


ベッドに転がり サイトを呼び出した


綾が鍵をかけていた

相手は潤也

なんだか俺は胸が重たいような胃が酸っぱいような気分になった

携帯を閉じて目をつぶった


《綾》を思い出した


《綾》とは本当に上手くいっていた
俺は本気で好きだったし 綾も同じ気持ちだったと思う
彼女が本格的な受験シーズンに突入してからはあまり会わないようにしていたがメールは毎日していた

お互い励ましあっていた


《綾》は受験に失敗した



突然に俺を避け メールの返信も来なくなった
もちろん電話にも出ない

しばらくして メールがきた
好きな人ができたと書かれていた

22才のサラリーマンらしい

俺は納得がいかなかった

一度会って話たいとメールしたが返事はなかった

彼女の家の近くまで行ったが チャイムを押す勇気がない

つきあって一年三ヵ月…そんな終わりかただった

あまりにも唐突で訳がわからなかったし やっぱり俺なんかじゃ 彼女の支えにはなれないんだ…



再び携帯を開いて画面を呼び出した


綾はいなかった


―ROOM020へようこそ優さん
やけにピンクの文字が毒々しくエロチックだ


「更新」


―美月さんが入室しました

美月》ひさしぶり〜 今日は彼女いないの?(笑)

優》そんなんじゃないよ

美月》鍵


…また 監禁された

美月》二人で話たいんだもん いいでしょ?

優》いいよ(笑)

美月》優ってさあ なんかいいよねー。話かたも優しいし

…普通だと思うんだけど…

優》そうかなあ(笑)

美月》それに ガツガツしてないしね ほかの男みたいに

…いえ それは ここにガツガツする要素がないだけで…健全な17才の男子ですが わたくしも


優》そう?僕だって男ですよ(笑)

美月》優って話す事とかもかわいいしさあ…タイプだなあ


…つか ほかがどれだけ鬼畜なんだよ と思いつつ 話を合わせる


美月は何回か絡んだが執拗に誘ってくる


美月》優とエッチしたいなー


優》いいよ


俺はOKした
綾のことも面白くなかったし 他の反応も気になった


テレビも相変わらず熱湯の中に芸人が落ちて 無様に飛び跳ねていた



美月は予想以上に奔放で激しく 俺はタジタジだった

やっぱ 綾がかわいいや

なんか疲れた もちろん俺はつきあってるだけ


美月》なんか よかった♪やっぱり 優ってかわいい


…なにが どういいのか?
俺はネカマになって他の男と試してみようかと考えたが さすがに気持ち悪いのでやめた

美月はこれから飲みに行くといって落ちた
えっ!もう0時回ってますけど…タフなんですね
完全に遊ばれてるって気がする(苦笑)



またもやテスト期間のためしばらくサイトにいかなかった

ROMってはいた

綾は よく みかけたし 綾の部屋はいつもどおり賑やかだった

潤也はみかけなかったし綾が鍵をしてるのも見なかったが あまり気に止めなかった



久々にサイトを開いた

俺が待機していたら美月が来た

俺は思わず居留守を使い落ちた


あの後 綾がいないとき 数回絡んだが ちょっと辟易していた
美月ってもしかしたら相当年齢が上か オカマかも…という疑惑が俺の中にある

それくらい激しいのだ(苦笑)

しばらくして再び覗いたら綾がいた


俺は入室した

綾の歓迎ぶりがかわいらしいし 俺をホッとさせた


綾はいつも 明るいし なんというか おおらかだ



綾は鍵をかけた



優》最近潤也とは会ってないの?


「更新」


「更新」

…あれ?どうかしたかな?

綾》潤也とはもうエッチしないって言ったの そしたらキレて ずーっと悪口言われた(笑)

優》えー なんで?


綾》そのあと潤也 他の部屋に移動して ずっと独り言で悪口言ってた(笑) 綾が悪いから仕方ないんだけど

優》フーン…なんか大変だったんだね

…俺はテレビを見ながらテキトーに相槌をうっていた

綾》もう 他の人とはしないことにしたの

綾》優がいいから(笑)それに… 優は美月と何話してるの?


優》別に…相談とかされてただけだよ


綾》そうなんだあ。なんかアレ見たとき 胸が苦しくなって…だから綾も他の人と鍵するのやめようって思ったの

…俺は少し胸が痛かった



優》じゃあ この間は潤也とそういう話をしてたんだね

綾》見てたの?

優》うん たまたまね

綾》ずっと優を待ってたんだあ だから他の人と話しててもあんまり楽しくなくて…


…俺は少し困惑した

綾がそんな風な話しをするのははじめてだった

いつも明るく バカ話をしたりしていたから

綾が出かけるといって落ちた俺は少しホッとした
少し重い…というか…気まずい感じがしたからだ


でも次に会ったらいつもの綾になるんじゃないかな?

綾が落ちて鍵を解除した

知り合いもいないし俺も落ちようとしたとき誰かが入室してきた

―潤也さんが入室しました

潤也》バーカ 死ね!この野郎!!


…はあ?なんだコイツ

―潤也さんが退出しました

一言罵り落ちていった
顔も知らない 絡んだこともないやつに罵られるってかなり気分が悪い

見てたっていうのが気持ち悪かった


一週間ほど 忙しくてサイトにいかなかった

ROMる事もしなかった

なんとなく綾も潤也のことも面倒くさい
綾の事はなんとなく気掛かりだったけど テキトーに楽しくやってるだろ


綾が待ってるかもなあ

やっぱり気になってサイトを開いた


綾はいた


少し迷ったけど入室した

―優さんが入室しました

綾》ああ〜!優だあ!


…普段どおりに歓迎された よかった 明るくて

優》こんばんわ 元気?

綾》鍵


綾》優が来てくれなくて淋しかった

…俺はテレビのカウントダウンものを見ながら文字を打つ


優》ごめん ごめん

綾》美月も優を探してたよ?やっぱり仲良しなんだね

…はあ…なんか少しめんどくさい…

優》そんなことないよ。

綾》やっぱり美月となんかあった?

…あ〜…別にあったとしてもたかがチャットだし…

優》なんで?なんにもないよ

綾》だってさ…

…俺は少しイラついた

綾》ごめんね なんか綾…重いよね…

優》なんで謝るの?別にいーよ

…ああ ニガテな展開…

綾は俺の機嫌を取り始めた
綾がネガティブな発言をするなんて聞いたことなかったから余計にイラつく

綾》ごめんね 優 怒った?

優》だから謝らないでいいよ。なんか 綾変だよ?

綾》ごめん。ただ優と普通に話たいだけ。

優》だから俺は普通に話してるし俺だって楽しくしたいと思ってるよ。綾は俺に何を求めてるの?

…俺はイライラしてついキツい感じに答えてしまった

「更新」


「更新」


…綾が黙った


「更新」


綾》求めてないよ 何も。今までも これからも。




俺はふいをつかれた テレビを見るのをやめた


綾》求めてないよ。だって優はいつも バーチャルはバーチャルだって言ってたし…。でも 今までこんな気持ちになったことがないから綾もわからなくて…

「更新」


綾》だから どうしていいかわからなくて。いつも待ってただけだよ。


…俺はなんて答えていいかわからなかった


確かに綾は何も求めてこなかった

写メだって俺が求めた時は見せてくれたけど俺に要求したことはない

イヤ 出来なかったんだろう

綾と俺は待ち合わせすらしたことがない

綾はただ いつ現れるかわからない俺を待っていただけだ

綾は何も求めずただいつも明るく俺を迎えてくれた

優》ごめん

今度は俺が謝る番だった

綾》なんで?なんで優が謝るの?


優》ごめん 俺 落ちるね


俺は携帯を閉じた

なんだか情けなかった

俺は綾に《綾》を重ねていただけで…

綾のグチは《綾》のグチとして聞いていたし

綾ではなくて《綾》を思って抱いていたし

綾に《綾》を重ねてイライラをぶつけていた


俺は気づくと泣いていた


綾のもどかしさが今の自分と重なる

綾のことなど何ひとつ見ていなかった

潤也に罵られた時もきっと怖かっただろうな
文字…いや 言葉は時として精神的に相当なダメージを与えてくる

俺は慰めることもしなかった


綾はただ俺を待ち 明るく受け入れてくれていた


《綾》と別れてから一度も涙は出なかった ショックが大きすぎたんだと思う


俺はこんなにも《綾》が好きで忘れられない

綾との出会いで更に思い知らされた


俺はなぜ玄関のチャイムを押さなかったんだろう


なぜ もっと《綾》にぶつかっていかなかったんだろう

涙が止まらなかった


俺はなんにも納得してない

泣くだけ泣いたらすっきりしてきた


今までのモヤモヤが少しだけ晴れていく


俺は《綾》といた時間を思い出し考えていた
彼女の性格から考えたらやはり今回の別れかたは腑に落ちない

《綾》はもしかしたら自分の失敗のショックもあるだろうが…俺が受験に失敗しないように避けたんじゃないだろうか…

いずれにせよ確かめるんだ自分で…



綾…ごめん… 俺は綾の写メに向かって呟いた



翌日の日曜日


俺は何度となくサイトを覗いて綾を探した


日曜日は学生のバイトがたくさん来るから休みの日があると言っていたから


夕方 綾はやってきた

俺はすぐ入室した


綾に謝り そして自分が高校生で受験生であること 忘れられない人がいること などを打ち明けた
たぶんもうここには来ないと話した
彼女の名前が綾だということは黙っていた



綾は俺が高校生だということに少し驚いていた


綾》優のエッチって…なんか優しくて心をギュッてされてる感じだったよ


優》え?そうかな


綾》…正直 時々 誰の事を考えてるんだろうって思う時があった

綾は俺が好きだと言ってくれた


意外な事をいいだした


綾》30分後に電話をかけてきてくれない?非通知で


優》うん わかった


綾の出して来た電話番号を控えて俺達は部屋を閉じた

―ROOM018は閉鎖されました




30分後 言われた通りに俺は電話を非通知でかけた


トゥルルルル…
   トゥルルルル… カチャ

『もしもし 優ですけど』

俺は少し緊張した

『あ 優くん?綾だけん』

九州訛りのある 暖かみのある声がした

『えーと はじめまして…も変かな…なんか緊張する』

『うん なんか 緊張するね』

受話器の向こうで笑っているみたいだ

『どうして30分後だったの?忙しかった?』


『ううん 泣いてたんよ。鼻カンでたけん。』

俺は一瞬言葉に詰まった

『ふふ 想像してた感じの声だなあ〜。ねぇ ホントの名前はなんていうの?』


『愁平。岡田愁平っていいます。哀愁の愁に 平面の平。』


『ふうん 愁平くんかあ。ウチは真奈。 真実の真に奈良の奈。』


『どうして 非通知で?』


『だって… かけたくなったら困るけん…。』


俺は鼻の奥がツンとした

綾…いや 真奈がかわいいと思った

『愁平… あの…名前…呼んでくれん?』


俺は少し照れくさかったけど

『真奈 ありがとう 今まで楽しかったよ。』

と言った

真奈はしばらく黙っていた

『ありがとう ウチも楽しかった 愁平。 さよなら。』

『うん さよなら…ホントにありがとう。』

『もし フラれたらいつでもかけてきて いいけん。』

真奈の声が泣き笑いに聞こえた

『わかった じゃあね。』


『うん じゃあね。』



俺は電話を切った

綾…君がどうしてこの2次元の住人になったかはわからないけど

きっと寂しさやいろんなモノを心に抱えて来てるのだけはわかるよ

俺は君に何もしてあげれなかったけど…
君の明るさやおおらかさに助けてもらった


ごめんね…ありがとう



さよなら 2次元の綾



俺はそれから《綾》にメールを打った


自分の気持ちを打った


綾  俺は君が彼氏を作った事が信じられないんだ

こんな時期に人見知りの君が新しい人を選ぶなんて考えられない

俺 この目で見てないから(笑) 紹介してくれ

他に理由があるならなんでも言って

俺をしっかり振ってくれよ

俺には君が必要なんだ

俺は綾じゃなくちゃダメなんだ…



俺は家を出て 《綾》の家に向かって歩きだした




正直不安でいっぱいだ


こっぴどくフラれて傷つくかもしれない



俺は彼女の家の前で深呼吸をした



夏の匂いが胸一杯に広がる


俺はチャイムを押した


著作者:風海南都   著作者の作品一覧へ   ホームへ
作品の著作権は著作者にあります。無断転載は厳禁です。



  
ホーム>オンライン小説,ネット小説,ウェブ小説,総合の投稿小説空間へ