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[あらすじ]
どこにでもいる普通の野球部員。先輩がノックしたボールが昔の部室に入り、
取りに行くと幽霊が出てくる。話を聞くが、悲しい過去を知ることに。
感動ホラー物語・・・・とはいきませんが感動物を狙ったつもりです。 |
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マネージャー
ミーン、ミンミンミンミンミン・・・ミーン、ミンミンミンミンミン。セミがうるさい。
「もう一丁!」
「オース!」
ここは、沖縄県の首里地区にある、首里中学校だ。建てられてからすでに60年が過ぎている。しかも味のある校舎で、なかなか人気がある。ついでに言うと、今は夏休み。なのにもかかわらず、朝っぱらからこうやって野球部の練習に引っ張り出されているのは、やっぱり期待されてるってことかな?
首里中(ウチ)の野球部は、結構強い。と僕は思う。大会でも結構、深くまで喰い込む。だけど数年前までは最弱だったとの噂。その為、部室も小さく、不便な場所に建てられていた。ま、顧問が変わってからはビシバシ鍛えられて、そのおかげで部室も、いいところに建てられた。運動場からも近いし、日当たりもいい。で、昔の部室は、1階にある第3理科室の奥にある。これがまた不便でねぇ〜。理科室のベランダのドアはいつも開いてるけど、これはめっちゃ遠回り。
そこで塔みたいな建物の登場だ。その塔みたいなものに登る途中に螺旋階段の途中に野球部の部室がある広場がある。隣にはテニス部。その隣は・・・分からない。まぁとにかく、その広場には数個の部室がある。広場の中央には、四角い出っ張りのようなものがある。そこには鞄とか、畳むのが面倒くさい学生服とかをよく置いた。しかも、帰る時は必ず目に付くから、とても便利だったらしい。と、ここまでが数年前の野球部の先輩に聞いた話だ。
っと。少しぼうっとしてた。センパイからの打ち上げたフライが、こっちに来る音が聞こえた。
「おーい、カザー。いったぞー」
「あいよー。」
関係ないけど、僕の名前は天川 風守だ。カザではない。だけど、ほとんどの人が面倒くさい名前だと、カザと呼んでいる。まぁどうでもいいんだけどね。
話がそれた。センパイの打ったボールは少し勢いがありすぎた。追いかけても追いかけても近づけない。そのうち、その昔の部室のある、広場に入ってしまった。
「センパイ、向こうに入っちゃいましたけど」
向こうの部分で広場を指差す。センパイはしばらく考えると、言った。
「今日はボールが少ないんだ。悪いけど取ってきてくれないか?」
「はーい」
僕はグローブを放ると、一目散に広場に向かった。
ミーン、ミンミンミンミンミン・・・ミーン、ミンミンミンミンミン。セミがうるさい。
広場に着いたはいいけど、ボールは見つからない。困ったなぁ・・・仕方ないから、すでに廃屋化した部室を調べる。テニス部・・・無い。ソフト部・・・無い。次は野球部。これであったらお笑いだな。
そして・・・
「無いなぁ・・・」
見つからない。入り口を向こうとした僕は、背中に気配を感じた。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・もしこれがホラー小説だったら、振り返ったら幽霊がいるんだろうなぁ・・・。お岩さんみたいな。まいったなぁ。俺、幽霊とか、そのてのもの苦手なんだよなぁ。でも美人だったら少しためらうだろうなぁ。うーん・・・・・・・・・・よし!振り返って、足があったら挨拶して帰ろう。足が無かったら・・・・・・・・悲鳴を上げて逃げて帰ろう。
そして、恐る恐る振り返った。可愛い女の子が立っている。可愛いって言うより、・・・いや、やっぱ可愛いんだけど、なんつーか、可愛いって言うより、どっちかって言うと、美人ってグループに入るような気がする。うん、美人だ。しかも、足がある。だけど、知らない人だ。同学年って雰囲気があるけど。
「こんにちは。」
女のこの方から言ってきた。
「こんにちは」
とりあえず返事を返す。
結構美人だったので、すぐに通り過ぎるのを躊躇してしまった。女のこの方も、なんとなくためらってるみたいだ。
「このボール、キミの?」
よくよく見ると、その子の手には野球ボールが握られている。
「あ、あぁ、うん。そうだよ。」
女の子はボールを放ってきた。片手でキャッチする。
「キミ、野球部員なの?」
え、えぇ?何で?会ったこともないのに。もしかして追っかけ?いやいやいや、この俺に追っかけが出来るなんて天地がひっくり返してもありえないし・・・あ、なんだか自虐ネタみたいにになっちゃった。
「何で分かったの?」
女の子がクスクス笑ってる。
「だってキミ、そんなカッコしてたら誰だってわかるよ」
「あ・・・」
気が付かなかった。僕の服装は、今さっきのまんま、つまり野球のユニフォームだ。これでは馬鹿でも分かる。
「そっか・・・」
そんな言葉が口から漏れる。ところがそんな僕をよそに、まだ女の子は笑ってる。
「キミ、面白いね。」
そうかなぁ?そんなに面白いかなぁ?すると、また女の子が口を開いた。
「へぇ。風守って言うんだ。カッコいいね」
今度こそ驚いた。僕のユニフォームには名前が書いてない。いや、書かれてはいるんだけど、背中に、しかも名字しか書いてない。『天川』って。それなのに、僕の名前を知るなんて不可能だ。
「何で分かったの?」
さっきと全くおんなじ言葉が口から出る。それに対して、女の子はイタズラがうまくいった子供みたいな表情をした。
「ふふふ、さて、何ででしょう?」
僕が首をひねっていると、その女の子が言った。
「少し話しよう。」
その子がそう言うと僕の手を引いて、でっぱりのところに連れて行った。
「でも俺、練習あるし・・・」
女の子が腰を下ろした。
「大丈夫。時間ならたっぷりあるし・・・」
女の子は、不思議な笑みを浮かべた。なんだか、本当にそんな気がしてきた。ここだけ、時間が止まってるみたいだ。
僕も腰を下ろすことにした。
「なんて呼べばいい?」
真っ先にそう聞く。
「そうねぇ・・・」
その子はしばらく考え込むと、面白そうに言った。
「マリアって呼んで。」
僕は力なくうなずいた。
「そういえば知ってる?」
マリアがいきなり言ったので、少し面食らった。
「何を?」
マリアは、僕の方を見ると、少し距離を詰めた。
「この学校で起こった哀しい話。」
上目遣いに話しかけてくる。
「知らない。話してくれるの?」
マリアは、にっこりと笑うと、うれしそうに頷いた。
「昔ね、この部室がまだ使われてたくらい昔。野球部弱かったのよ。何でか分かる?知らない?私も知らない。何でだろうねぇ?それでね、マネージャーがいたの。私とおんなじくらい美人の。ちょっとぉ、笑わないでよぉ。それでね、そのマネージャー、一生懸命働いてたって。弱いのは、何か理由があるからって。それで、休日とかも使って、ほかの学校の練習法とかも一生懸命勉強して、何とか野球部を強くしようとしたの。それでも全然強くならなかったけどね。
それでね、ある日の夕方に、ずいぶん暗くなってたんだけど、図書館で調べ物してたマネージャーが、部室に入って行ったって。それで、電気をつけようとしたら、マネージャーは捕まった。」
「苦しかった?」
「苦しいより、恥ずかしかった。この上ない屈辱だった。」
マリアは、僕の口調の微妙な変化に気付かなかったようだ。
「それでね、一週間もするとその噂は学校中に広まった。マネージャーは優等生だったけど、こんなふうに悪い噂の的になるのが絶えがたかったわけ。それである日、マネージャーは屋上に行くと、何も言わずに、遺書も残さずに飛び降りて自殺した。」
マリアの話が終わった。少し、気まずい空気だ。
「それは・・・・・哀しい話だね」
マリアは、再びにっこりと笑うと、言った。
「でしょ?でしょ?」
「苦しかったね・・・ずっと、独りぼっちだったんだ・・・」
「ちょっ、やだなぁ。あたしじゃないって。」
僕は気付いてしまった。あの話を聞くまでは気付かなかっただろう。マリアの笑みの裏には、言いようのない哀しさがあった。話を聞いてからは、どう見て無理をした笑顔にしか見えない。
「何年前の話なの?」
何となく聞く。少し言い過ぎた。慰めたほうがいいかな?
マリアを見ると、目いっぱいに溢れんばかりの涙が浮かんでいた。そしていきなりワッと泣き出すと、僕の胸に顔をうずめた。切れ切れに声が聞こえる。
「あたし、本当は淋しかった。独りぼっちだった。怖かった・・・・・・誰かに助けてほしかった・・・・・・」
マリアを通じて、その本当の、何年も独りぼっちだった寂しさが伝わってきた。その寂しさが和らぐように、背中をぽんぽんとたたく。
「もう大丈夫。安心して逝ってきていいよ」
マリアは、本当に、心の底から、嬉しそうに笑った。
「キミに逢えてよかった・・・」
微かにそう聞こえた。いつの間にか、僕の腕の中にいたマリアはいなくなっていた。
僕はゆっくりと立ち上がると、さっきマリアに放ってもらったボールを握り締め、運動場に向かった。
「遅くなってすみませーん」
声を張り上げる。それに答えたのは、センパイの不思議そうな声だった。
「遅くなったって、お前、10秒も向こうにいなかったじゃねぇかよ。ボール取ってきたのか?」
僕は無言で手に持っているボールを見せた。本当に不思議そうなセンパイの声。
「そ、そうか・・・」
僕は我知らず、広場のほうを見た。そこでは、マリアが失敗したなって顔で、笑顔で舌を出していた・・・ような気がする。
僕は、気が付いたら、手を振っていた。
ミーン、ミンミンミンミンミン・・・ミーン、ミンミンミンミンミン。セミがうるさい。
でも、今日も楽しくなりそうだ。
昔、首里中学校で野球部の部室でマネージャーが性的暴行を受けたとの噂がある。
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