血吸い。
ファンタジー小説  著作者:桂子      オンライン小説SNSへ

[あらすじ]
タカハシアマネは何となく入った理科室でサイトウヒフミがあることをしていて・・・・・。
血吸い。

  お腹空いたなあ。
  普段はこんな時間には空かないのに。
  とことこと南舎2階渡り廊下を歩いていく。 今、放課後4時24分。と、携帯が知らせる。
  ついでにタカハシアマネは特に部活には入っていない。帰宅部?だ。
  アマネはふと、何かを感じた。
  何か。わからないがアマネはそれに導かれるように第三理科室に足を運び、ドアを開ける。
  そこにはサイトウヒフミがいた。
  アオイが理科室のドアから一番遠い机に載り、左手のカッターナイフで右手首をかっ切って、血を流していた。
「あれ?タカハシさん?どうしたんだい?」
  ヒフミはこちらに気付いたようでアマネに声を掛ける。
「あ・・・・。何、やってるの?早く止血しないと!」
  アマネはあわててヒフミの側に駆け寄り、アオイの右上を心臓よりも上になるように両手で持ち上げた。
  制服をまくし上げた男の割にはか細い右腕に、まるで真っ二つにするかのように血が流れ落ち、曲がった肘からポタリ、ポタリと理科室の白いタイルに落ちていく。
  アマネは思わずそれに見入ってしっまていた。赤い血が、一の字のような切り口から腕を細く伝い、肘でその血はたまり、丸くなり、崩れ落ちていく。
  いつの間にかアマネは、その流れ出る血の筋に唇を当て、舌でなぞり、ぴちゃぴちゃとその血をなめていた。
  なま暖かい鉄の味がする赤い液体は、アマネの体の中へと満たされていく。
  やがてその唇と舌は傷口に触れ、そこからごくりごくりと血を飲み込んでいく。
「・・・・・タカハシさん?」
  ヒフミの普段の静かな声でアマネははっと我に返り、唇をアオイの手から放した。
「ごっごめんなさい!私ったら・・・・。」 あわててぺこぺことアマネは頭を下げる。「いや。良いんだけどさ。タカハシさんってー吸血鬼?」
  ほぇ。とアマネは声を漏らす。
「・・・・・吸血鬼?」
「そう。吸血鬼。」
「・・・吸血鬼って言うと・・・・」
「人を夜な夜な襲って首筋にがぶりと噛みついて血をすすり取る奴だねえ。」
  アマネの言葉を引き継ぐようにアオイは言う。
  吸血鬼。いまいちぴんとこない。
  それにアマネ自身が吸血鬼かと聞かれても困る。そういう家系なのかもすら知らない。「もしかしてタカハシさん。血、吸うの初めて?」
  その答えにアマネはこくりと頷く。
「んじゃあさ、なんかお腹空かない時間なはずなのにお腹空いたりしてなかった?」
「あ〜。して・・・・・た?」
「いや疑問系で言われても困るから。」
  ヒフミの質問に微妙な答えでアマネは答える。
「あっ!そんなことより止血しないと!」
「いや。止血しなくて良いみたいだよ。」
  ふぇ?と思わずアマネは声を出す。
「だって。血。止まってるよ。ほら。」
  そういいヒフミはアマネの前に腕をつきだした。
  そこには確かに傷はあった。
  しかし、そこから血はもう流れ出ていない。 アマネは目を見開いた。
「どうしてって顔してるね。俺の推測で言わして貰うが良いかい?」
  アマネは僅かに頷く。ヒフミも確認したように頷く。
「普通なめてもこんなすぐに止血は終わらない。しかも俺は結構深く切ったと思ってるよ。」
  少しヒフミは間をおいてアマネに言う。
「吸血鬼の唾液には、人の治癒能力を高めることが出きるそうだ。それと同時に血も一緒に吸うことがあるらしい。タカハシさんは血を吸ったのは初めてだしもしかしたら傷口は浅かったのかもしれない。でも、タカハシさんが吸血鬼って言う確率は高いよ。さっき、言ったよね。お腹空かない時間なのにお腹空くって。それはきっと吸血鬼としての、血への飢えだったんだと思うよ。今はどう?お腹の方は?」
  そういわれてアマネは驚いた。
  今、アマネのお腹はヒフミの血で満たされているかのように、満腹感がある。
  吸血鬼。そうアマネは呟いてみる。
「でも、何で急に?今まで。無かったよ。」 少しの間が経ってアマネは口を開いた。
「私、きっと吸血鬼だけど何でいきなり血を吸うようになったのかしら?今まで血、吸ったこと無かった。それに、何でサイトウさんはそんなこと知ってるの?」
  ヒフミは僅かに目を見開く。
「それはー俺は魔法使いの一族で、代々吸血鬼と『契約』をしてきた一族だから。」
  アマネは目を見開く。
「あと、吸血鬼って言うのは生まれた時から血に飢えているわけじゃないらしい。だいたい人によって差があるらしいけど14〜17歳位になると飢えを覚えるらしいよ。」
  魔法使い。吸血鬼。飢え。『契約』。
  様々な言葉がアマネの中に渦巻く。
  それに気を取られていたアマネははっと一番大事な?事を聞くのを忘れていたのに気付いた。
「ねえ。何でリストカットしてたの?しかもこんなところで。」
  ヒフミは少し目を見開く。そういえばアオイは同じクラスだがほとんど表情の変化が見られない。有ることはあるがそれはほんの僅かで一瞬のことだ。
  ヒフミはもとの表情に戻ったと思うと急に腹を抱えて震えだした。
  笑っている。
  そう思った瞬間アマネは固まった。
「ほぇ?どう・・・したの?」
  かろうじてアマネがそういうとアオイは口に手を当ててかろうじてという感じで話し始める。
「いやいや。面白いなあって。」
  ほぇ?と、アマネが声を漏らすと
「いやいや。ここに来たのは気まぐれでね。ここだけの話だけど今、この第三理科室の鍵は無いらしくてね。無くなったとき上の窓の鍵が掛かってなかったから泥棒紛いな事してドアを開けたらしいけど毎回そんな事してたらきりがないだろ?だからここの鍵は開きっぱなしなんだ。家帰る気分じゃなかったからさ、ここに来たんだ。それに、生きるのに退屈になったから、何となくカッター握りしめて、手首切ってみたんだ。」
  生きるのが、退屈なった。
  どういう意味だろう。
  そのことをヒフミは悟ったようでいつもの無表情に戻り口を開く。
「何もかも、簡単すぎると思っちゃってね、つまらないんだ。勉強も。運動も。友達と話すのも。恋とか愛とかに興味もないし。自分的に、つまらないんだ。」
  アマネは驚いた。
  少しの間、アマネは顔を伏せる。アオイはいつもの無表情でアマネを見ている。
  アマネはきっ!と前を向く。
「なんで?そんなの、解らないじゃないの!勉強は確かにつまらないし運動も苦手だし、愛とか恋とか・・・そんなのはおいといてさ、確かにつまらないこといっぱいあるかもしれない。でも、それが全てじゃないと思う。おいしいものいっぱいあると思うし恋とか愛とか、そういうのもきっと興味が出るようになると思うし、それに、私的に、つまらないのも、面白いとか、楽しいっていう一部のもとだと思うの。だから、そんな、自分を傷つけちゃ、駄目だよぉ・・・・・。」
  少しづつ声が弱くなる。
  その様子を見ていてか、ヒフミは口を開く。
「それじゃあさ、俺を楽しい。とか面白い。とか、そういうの、教えてよ。」
  ふぇ?
「愛とか恋とか教えてくれよ。おいしいものとか、一杯教えてくれよ。俺、そういうのわかんないんだよ。」
  解らない?
  アマネはぱちくりと目を開ける。
  アマネはにはっと笑い、
「うん。教えてあげー。」
  いきなりヒフミはアマネを抱きしめた。
  アマネの思考回路が、一時停止する。
「んじゃあ。よろしくな。」
  それだけいうとヒフミはアマネを放す。
「で、さっきの話に戻るけどータカハシさん?どうした?」
  フルフルとアマネは首を振る。
  びっくりした。こういうのも、恋とか愛とかだと思う。

  悪魔は吸血鬼を作り、それに対応するために天使はヴァンパイアハンターを作り、妖精は気まぐれに魔法使いを作り、その争いを眺めたそうだ。
  ハンターの力は圧倒的で、吸血鬼は滅ぼされるしかった。ところが気まぐれな魔法使い達が吸血鬼に手を貸し、ハンターを倒す。それが『契約』。
「ー『契約』は魔法使いが吸血鬼を守り、また吸血鬼が血で飢えたとき血を与えるんだ。」
「へぇ。でもそれじゃあ魔法使いは良いこと無いんじゃない?」
「有るんだなこれが。」
「へぇ。それって何?」
「秘密。」
  あ。怒ってる。ヒフミは人の様子を見るクセがあるのかもしれない。
「なんでよ?」
「なんとなく。」
  あ。もっと怒った。
「まあともかく、ヴァンパイアハンターには気を付けるんだよ。ってことだよ。」
「あ。流さないでよ。」
  アマネは頬を膨らます。なんだろう。なんかむずむずする。
  何だろうと思っていると下校時刻15分前のチャイムが鳴った。
「あれぇ?もうこんな時間なんだ。気が付かなかった。」
  きょとんとしているアマネを見てヒフミはふっと声を漏らす。
「俺、いっつも放課後ここにいるから。」
  そうヒフミが言うとアマネはにはっと笑い、
「うん。待っててね。」
  ヒフミはまたアマネを抱きしめる。
「おう。待ってるから。」
  そう言いヒフミはまたアマネを放す。
  アマネは固まっていたが少しすると何故か頬を赤らめてじゃ。と言うのでアオイもじゃ。といい、二人で第三理科室を出る。

  二人は気付かなかった。
  チャイムが鳴る少し前まで、一人の男がいるのをー。

  翌日。
「あなたがくれたもの、たくさん僕持ってぇえ〜る。」
  アマネはRADWIMPSの『25コ目の染色体』を歌いながら校門をくぐる。
「それを今、ひとつ、ずつ、数えてぇえ〜る。1,2,3個目がー涙腺をぉノッ」
  がちゃりと下駄箱を開けるとアマネはぴたりと止まる。
  手紙が入っている。真っ白な封筒に、綺麗な字でタカハシアマネ様へと書かれている。
  アオイかな?そう思ったが帰り際に携帯の番号は教えたはずだった。試しに携帯を見てみるがちゃんと入っている。
  ひとまず開けてみると大学ノートを切って出来たような紙に綺麗な字が書いてあった。『放課後第二美術室に来て下さい。
       3年D組、スズキコウタ。』
  ースズキコウタ?誰だろう?しかも3年生。 ・・・まあ後で行ってみれば解るか。念のため友達に聞いておこう。
  再びアマネは歌い出し、その手紙をぽっけに中に入れ、靴を履き替え、教室へと行く。

「あなたが死ぬそのまさに、一日前にぃ〜」 放課後、アマネは手紙の指示通り第二美術室に来ていた。ヒフミには遅れると言っておいてある。同じクラスだし。
  クラスの女のこたちに聞くと
「ええ!?知らないの!?あのコウタ様を!?信じられない!」
「コウタ様はねえ。彼氏にしたい男の人、抱かれたい男の人校内ナンバー1なのよ!何で知らないの!?」
「もうね!コウタ様ってすっごくかっこいいんだから!」
「ほぇ〜・・・そんなに凄いの?」
『もちろんよ!!』
「ところで何でアマネはそんなこと聞いてくるの?」
「なんとなく。」
  怪しまれたけどふぅん。と流されたので大丈夫だと思う。
  とにかくスズキコウタと言う人はそれだけ大物?なのだということは解った。
  アマネがRADの歌を2,3曲歌っているとがらっとドアが開く。
「ふわ。あなたがスズキコウタさん?」
  アマネはきょとんとしながらやって来た人物を見つめる。
  その人の目はきりっとしたつり目に綺麗な黒い瞳。きゅっとしまった唇。すっとした鼻筋。一つ一つのパーツがバランス良く整っている。束ねた長い髪の毛がキザっぽさを創り上げている。なるほど。これは確かに人気が出そうだ。しかしアマネの好みではない。
「ああ。僕がスズキコウタ。君を呼んだのは僕だよ。」
  にっこりとスズキコウタは微笑む。たいていの女の子達ならばこれでノックアウトだが、アマネには全然通用していない。
「ほえ〜。何のようですか?」
  アマネは軽く笑顔を返すとスズキコウタはアマネを抱きしめてきた。
  ・・・なんかスキンシップ激しい人最近多いのかなあ・・・?とアマネは思いながら
「あのぉ〜・・・何のようですか?」
  そうアマネが訊ねるとスズキコウタはアマネの頭を片手でそっと撫で、もう片方は背中に手を回す。
「ねえ。僕昨日見たんだけどさ。」
「はい〜?」
「君、人の血。吸ってたでしょ?」
  びくり。とアマネの体が震える。嫌な予感がする。胸がどくん。どくん。と響く。
「なっ何ですか?急に。」
「見たんだよ。第三理科室で、誰かの血を吸ってたのを。君さ。」
  どくん。どくん。と更に心臓の動きが激しくなる。
「吸血鬼でしょ?」
「なんでですか?そうだとしてもあなたには関係ないじゃないですか!」
  上目遣いにスズキコウタを見上げ、アマネは即答した。
「血を吸うのは吸血鬼しかいない。しかも僕には関係有りまくりなんだよ。」
  ふとアマネは気付いた。背中に回っている手がカッターナイフを握っていることを、
  それがアマネの背中に当たっていることを。
  そしてスズキコウタはアマネの耳元で囁くように言った。
「僕は昔から君たち吸血鬼を恨み、殺してきたヴァンパイアハンターなんだからね。」
  アマネはそのとき急に何かが沸き上がってくるのを感じた。どくん。どくん。と、何かを感じる。
  後ろのカッターナイフを握った手がバチンと背中から離れた。いや。放された。
  カランカラン。と音を立て、カッターナイフは美術室のこびりついて取れない絵の具の着いた床の上に落ちた。
「な!?」
「放しなさい!」
  どん!とアマネは何かを放つ。そしてそれはスズキコウタに命中する。スズキコウタはそれにぶっ飛ばされたようで教壇の上にある鉛筆やら何やらをぶちまけてその上に倒れ込む。放ってから気付いた。真っ黒な闇だった。真っ黒な、闇の固まり。アマネはそれに少し呆然としたが今のうちにとドアを開け、走り出す。
  助かった。でもあいつからは離れないとと本能的に感じていた。走る先は第三理科室。ヒフミのいるところだった。

  ちっ。逃げやがった。
  しかももう力を使うことに目覚めてやがる。 こまったなあ。と、思いながらもコウタは携帯電話を取り出し、仲間と通信を取る。
  絶対に殺してやる。
  もう血縁の恥と成らないように。
  もう仲間外れにならないために。

  ヒフミはぼんやりとアマネのことを考えていた。
  おそいなあ。いつ来るんだろ。遅れるとは言ってたけど遅い。そうヒフミは外のグラウンドで踏ん張っているサッカー部や野球部の様を見ながら思った。
  たたたたたっ。と、走る音が聞こえる。アマネだそう思うと嬉しくなる。何だろう。まあいいや。アマネに後で教えて貰おう。
  がらっ!と大きな音を立ててドアが開く。 そして入ってきたのはやっぱりアマネだった。が、アマネはドアを閉め、中へ入ってくるとその場ではあ〜とため息を付いて座り込んでしまった。
「・・・タカハシさん大丈夫?」
「全然。」
  アマネは即答する。
  あわててヒフミはアマネに駆け寄る。
「スズキコウタって言う人がカッター持って殺そうとしてきたの。びっくりしたわ。」
  はあはあ。と、アマネは乱れた呼吸を整えようとしながら言う。
「それは大変だったね。」
  可愛い。と思いながらアマネの髪を撫でながら言う。
「その人、私が吸血鬼だって言うこと、解ってるみたいなの。・・・ヴァンパイアハンターかもしれない。」

  ヒフミは目をかすかに丸めながらいう。
「うわ。やっぱいんのか。」
「やっぱて何よ。」
「何となくだよ。」
  ほえ。とアマネはまだかすかに落ち着かない心臓に空気をいっぱい吸ってみる。うん。何とか落ち着いたみたいだ。
「・・・アマネ、『契約』、しようか。」
「ふえ?・・・『契約』?」
  いきなり呼び捨て?ヒフミはこくりと頷く。
「そう。俺たち魔法使いの一族は本来吸血鬼やハンターに協力は出来ないんだ。でも、『契約』すれば、君を助けられる。」
「たすける?」
  アマネは首を傾げる。と、
「!後もう少しで来るよ!」
  ぴこん!とヒフミの髪の毛が立ってカクン!と一定の方向を指す。
「それ、何で立つの?」
「そんなことおいといて!で、どうすんだよ?しないと多分、殺される。」
  殺される?
「それは嫌!まだ死にたくない!」
  アマネはきっとした顔でヒフミを見る。
「うし。やるか。」
  そう言いヒフミは目を閉じ、地面に手を当てる。
  ヒフミの、何かが変わった。
  そう感じた瞬間、
  アマネとヒフミの周りが光り出した。
『我は魔法使いの一族、我は契約をする。我に力を、この血吸いを守る力を、魔女・グリシディアよ!我に与えたまえ!』
  ぶわっ!っと、光があふれ出す。
  その光は幾筋にも走り、アマネとヒフミを囲み、包んでいく。
  そして、光が唐突に収まる。
  ばん!と教室のドアが開いた。
  そこから入ってきたのは、4人の男女生徒だった。
  その筆頭に、スズキコウタ。
「ちっ!!手遅れか?まあいい!死ね!吸血鬼!」
  スズキコウタの周りにいた人たちは一斉にカッターナイフや包丁などの刃物をアマネに振り上げる。
  逃げようと思った。けど、足がすくんで動けない。
  数が多い。
  直感的にアマネは感じ、逃げられなくなった。
  アマネはぐっと目をつぶる。もう駄目だと思ったとたん、ばち!と音がした。
  なんだろう?と、目を開けるとそこにはヒフミがいて、不思議な膜みたいなのを作って襲いかかってきた人たちを跳ね返した。
  ふえ。すごい。アマネは声を漏らした。
「アマネは殺させない!」
  そう言いヒフミは手のひらに黒い闇を作り、それを一人の生徒に向かって放った。
「うわ!」と言う声と共に後ろへと吹っ飛び、黒板にぶち当たる。
  アマネが先ほどやったものと同じだった。
「アマネ!後ろ!」
  ほえ?と思っていると後ろに何かいると気づき、あわてて横へと動くとうわ!と、女生徒が包丁を持って倒れた。
  すぐにその人は起きあがり動き出したが遅かった。ヒフミが後ろに周り首の後ろをトン。と叩いた。女の人はふっと倒れ込む。
「やあぁぁぁぁぁぁぁ!」
  と、今度は目の前から短髪の男の人がカッターナイフをアマネに向けて振り下ろす。
  そいつに素早くヒフミは腹にけりを入れる。
そのままその人は倒れ込む。
「いっけえ!」
  と言う今度は女の人の声と共にたくさんの水の大きな粒が向かってくる。理科室の水を操っているのだ。
  しかしそんなものはものともせずヒフミは手を出し突風で水を止め、跳ね返した。
「!きゃあ!」
  バシャッ!と女の人に水が掛かり、そのまま後ろへ吹き飛ぶ。
  あっと言う間に3人を倒してしまった。
「ふわ・・・。死んでないよね?」
「当たり前だろう。殺しちゃやばい。でも、ハンターは吸血鬼を簡単に殺そうとする。」
  アマネの答えにヒフミは静かに答える。
  この有様を見てスズキコウタは
「強いね君。でも、僕には勝てないよ。」
  スズキコウタはふっと笑う。
「僕は負けるわけにはいかないんだ。だから、勝たせて貰うよ!」
  スズキコウタは手のひらを出す。
  少しするとスズキコウタの周りに光が集まっていく。そしてそれは一つの棒状になり、スズキコウタの手に収まると、光が収まっていく。それは剣だった。60センチぐらい有る長い刃の部分はぎらりと光っている。本物だ。それをスズキコウタはしっかりと握り、構え、そして飛びかかってきた。
  それをヒフミはまた不思議な膜で跳ね返す。
「くっ!卑怯者!結界なんか貼りやがって!」
「勝負に卑怯も糞もあるか。そっちこそそんな危ないもの振り回してんじゃねえ。」
  ヒフミはまた闇を放つがあっさりと切られる。
「無駄だよ闇なんて!この剣は光の剣だ!」「へえ。んじゃ、闇以外なら良いんだな?」 ヒフミはぴたりと止まる。手のひらを前に出し、何かを唱える。
「!させるか!」
  スズキコウタはヒフミに斬りかかる。しかしそれよりも早く、
『魔女・フォルテナよ、契約者の我に力を貸したまえ!』
  グオッとヒフミの手に巨大なエネルギーが集まり、それを一気に放つ。
「くっ!」
  それを何とかスズキコウタは剣で受け止めるが後ろにどんどん押されている。
  剣が衝撃に耐えられなくなり、バリン。と壊れる。
「なっ!?うっうわぁぁぁぁぁ!」
  強く吹き飛び、スズキコウタは薬品棚にぶつかる。プラスチック製なのか、割れたりはしなかったがスズキコウタはその場に崩れ落ちた。

  お前は駄目な子ねえ。
  五月蠅い。
  やーい。落ちこぼれぇ。
  五月蠅い。
  お前なんか仲間に入れてやらねえ。
  五月蠅い。
  ねえ。大丈夫かなあ?
  あ。近づいちゃ駄目だよ。
  五月蠅い五月蠅い
「五月蠅い!」
  コウタは目の前にいる吸血鬼の少女の首を掴んでそのまま押し倒す。
「黙れ、五月蠅い。俺は落ちこぼれじゃない。だから、お前を殺してやる!」
  腕に力を込める。吸血鬼の少女が苦しそうにもがく。
「止めろ。」
  黒い変な物体が、俺の首を絞めに掛かってきた。魔法使いの魔法だ。
  コウタの腕に力が入らなくなったところで吸血鬼の少女はすぐにコウタの手を振り払い、間を取る。

  アマネはごほごほとせき込んだ。
  そしてスズキコウタをにらむ。そのスズキコウタは顔をうつむかせ、諦めたように言う。
「殺せよ。」
  スズキコウタのその言葉に、耳を疑った。「お前を殺させないなら、僕を殺せよ。」
「なんでだ。」
「もう嫌なんだよ!落ちこぼれ落ちこぼれって!学校では人気者でも、親族には、親には落ちこぼれとしか見られてないんだ!辛いんだよ!殺せよ!殺してくれよ!」    ? 「だめ。そんな事しちゃいけない。」
  アマネは言う。
「何で?学校だけじゃ物足りないの?人気者って、自覚してるじゃないの。十分だと思う。」
「僕には満足できないんだよ!認められたいんだよ!僕だけずっと仲間外れにさせてきた・・・あいつらに認めさせたいんだよ!」
「だからって人を殺すの?」
「吸血鬼は人じゃない!化け物だ!」
「化け物!?ふざけないでよ!」
「ふざけてるもんか!人の血を吸うなんて人間のやることじゃないじゃないか!」
「しょうがないじゃない!生きていくためにはしょうがないことなんだから!それを言ったら人間だって化け物じゃないの!別の生き物食べて生きてるんだから!」
「うっ。」
「別の生き物食べて生きてるんだからその分ちゃんと生きなさいよ!家の人だっていつかは認めてくれる!」
「無理だよ!もう良いんだよ!はっきり言ってもう、前から諦めかけてたんだから、もう本当に良いんだよ!」
「何よ!あきらめかけの度胸で人殺そうって?ふざけるんじゃないわよ!人の命をなんだと思ってるのよ!諦めて命を捨てたらもう帰ってこないのよ!あんたか死んだら悲しむ人はたくさんいるわよ!」
  一気にアマネは口に出していく。自分でもこんなにたくさんの言葉が出るとは思わなくて信じれ無くいた。
「んじゃあさ、僕が死んだら君は悲しんでくれる?」
「悲しんであげるわよ!悲しまれたくないなら死なないでよ!」
  しん、と沈黙が降りる。少し最後の部分がエコーになっている気がしてきて今更恥ずかしくなってきた。
  ぱちぱちぱちと何故か拍手がした。いつの間にか気が付いた生徒達が今の話を聞いていたのだ。
  無性に恥ずかしくて逃げた。
「あっアマネ!?どこいくんだ!?」
  ヒフミの声がアマネを追いかけてくる。
  アマネの足は速くて、すぐにヒフミの声が聞こえなくなった。
  丁度水道の前だったので、何となく水を飲んでみる。冷たい水がごくごくと喉を通っていくと頭が冷えてきてこっ恥ずかしいことを言っていたことに気が付いた。
  でも、あの言葉を言う相手が違った。
  ヒフミにもああ言ってやれば良かったと思う。
  それ以外にも、あの人に、
  タイムスリップできれば、きっとあの人は助かってた。
  アマネはきゅっと水道を止める。ハンカチを取り出そうとポケットに手を突っ込むと楕円の金属の感覚のするものがあった。それと一緒にハンカチも取り出し、ハンカチで口元を拭いてからそれをまじまじと見つめる。
  いわゆるロケットと言う奴だ。アマネはそっとロケットを開ける。
  そこには今より1,2歳若いアマネと、隣には男の人、アマネの好きだった人だ。がいた。男の人はそっとアマネに寄り添っていて、アマネは恥ずかしそうな顔をしている。
  アマネはしばらくそのロケットの写真を見つめ続けた。
「何見てんのアマネ?」
  真ん前から声がした。少しの間が立ってからふわぁ!?とアマネは叫んだ。
「いや、遅いから。」
「わっ悪かったわね!」
  アマネはあわててポケットの中にロケットをつっこんだ。
「それより良くわかったわね。結構複雑に走ったわよ私。」
「ああ。そりゃもちろん電波で」
「・・・一応自覚してるのね。」
  アマネはヒフミの頭のはねがピコピコ動いているのを見ながら私が化け物ならこいつの方が化け物なんじゃ・・・。と思った。
「ところでさっきのは凄かったなあ。」
「言わないで。昔言えてたら良かった。」
「昔?・・・あ。ごめん。」
  何となく掴んだらしいが本当に解ってはいなさそうだ。アマネが疑っているのを察したのかヒフミは言う。
「なにさ、昔悲しいことあったんだろ?」
「そうよ。だからもう、悲しいことは起こって欲しくないのよ。」
「・・・アマネ・・。」
  そっとヒフミは私を抱きしめる。
「・・・なによ急に。」
「別に。何となく。」
「・・・何となくで人を抱きしめるんじゃありません。」
「なんで?」
「恥ずかしいから。」
「誰もいねえよ。」
「そう言う問題じゃないでしょう。」
「なんで?」
  アマネは押し黙る。少し考えていると頭が痛くなってきた。
「そう言えばさ、『契約』の魔法使い側の良いことなんだけどさ。あれ、吸血鬼側を好きにして良いんだよな。」
「ふえ?・・・そんなこと聞いてないわよ?」
「おう。言ってねえもん。」
「なっ・・・・。」
  絶句。
「まあそう言うことだ。何。俺が退屈しない程度にならないと退屈で死んでしまいそうなんでな。俺を楽しませてくれ。」
「ふえ?ちょっ・・・どういう意味よ!それ!」
「だからさ、お前の言う楽しいことを教えてくれって言ってんだよ。なんだよ。俺が獣みたいな奴かと思ったのか?やーらしー。」
「けっ獣?何言ってんのよ馬鹿!」
「顔赤いぞ。可愛いなあ。」
「かわっ・・・・。そっそんなこと無いわよ・・・。」
「ははは。そうか?俺には可愛く見えるよ。」
  アマネは目を見開いた。
  ヒフミが、笑った。
  それも、はっきりと。素直に。
  その笑顔はアマネにかっこよく見える。
  胸が急にどきどきし始める。
「馬鹿!」
「おう。馬鹿かも。」
「素直に言わない!」
「良いじゃん。ほんとに俺には可愛く見えるんだからよお。」
  アマネは頭がくらくらして胸がどきどきする。
  無理矢理ヒフミから離れて早歩きに移動する。
「どこいくんだよ。」
「帰るのよ!それじゃあね!」
「駄目だ。一緒に帰るぞ。」
「ふわ?・・・嫌よ。」
「駄目。ほら。」
  歩き出したヒフミはアマネを追い、アマネの手を握る。
  アマネはぴたりと動くのを止める。
  胸のどきどきが、一層強くなる。
「・・・止めなさい。」
「嫌なこった。何?もっとひっついて欲しいか?」
  そう言いヒフミはアマネの肩を掴んで歩き始める。
「よけい嫌よ!馬鹿!」
  アマネが必死に離れようとするとヒフミは耳元で囁いた。
「嫌だね。お前のそばにると退屈しないからな。これからもたっぷりと楽しませてくれよな。」
「なっ・・・。」
  アマネはきっととんでもない奴と『契約』してしまったに違いない。

  無契約の吸血鬼・残り2
  契約済の吸血鬼・残り1
  ヴァンパイアハンター・残り16
  無契約の魔法使い・残り10
  吸血鬼とハンターの争いに、魔法使いは果たしてどのように動くのだろう。
  そして、子ども達の争いが幕開けするー。

??????????????????????????? END

  あとがき
  こんにちは。桂子と言うものです。別の物語も書いているのにすみません(汗)。そちらものんびり書かせて頂きます。
  このアマネとヒフミの物語は、小説という形にした後で漫画にしようと書いた物でした。でも途中でやめてしまい、描きかけのままになってて、小説の方だけでも、誰か他人の目に届いて欲しいなあと、投稿することにしました。
  では、またいつか、出会えることを祈って・・・・・。
                    平成19年7月上旬。桂子

  追記、初め書いているとき、ヒフミはアオイと言う名前でした。もしかしたら、一応見直しはしましたがそうなっているかもしれないことをお詫びします。

著作者:桂子      ホームへ
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